▲Scene image text▼
   射線が莢香の為の道を創る。そして彼女は、宣言通りにそこを一瞬で駆け抜けた。
   視認さえも追い付けない、文字通り一瞬の猛加速による突破行。
   ただ速く走るというだけではない。助走すらなく、一瞬で加速の頂点に達していた。
   そんな疾走は生物であれ機械であれ、運動物理学上不可能だ。
   まるで、その瞬間だけ時間が消し飛ばされたかのような……そんな不条理さえ感じさせる、異能の加速。
   それが、莢香の《特異点》だった。